
昨今は歯を出来るだけ大事に残して自分の歯で噛むという考えが定着しています。そのこと自体は間違いではありません。ただその反面、明らかに残せない歯を抜く決心がつかずに悩んでいる方もいらっしゃるようです。
残せない歯を無理に残しても、見た目も良くない・動いて噛めない・腫れる・匂いがする・内臓への悪影響の可能性などの問題点が却って出てきます。
当院では悩んだ末に、歯を抜いて義歯にすることにご決心された方を何人もお引き受けしています。治療期間は何ヶ月かかかりますが、その結果(義歯というハンデはあるにせよ)見た目が綺麗になり、食事もきちんと食べられ、歯の痛みも匂いもなくなり、内臓への悪影響も避けることができます。
治療が完了すれば、堂々と人前で笑うこともできます。友人と一緒に食事もできます。人生が明るくなります。今のままでは噛めない、抜いて入れ歯しかない、でも踏ん切りがつかない、どうしよう、と悩んでいる方はご相談ください。
以下に実際の治療の流れをご紹介致します。治療に際しては以下のような点に注意してご覧ください。
- 義歯は二回作ります。一回目は仮の義歯、二回目は本式の義歯です。
- 歯を抜くときは上下一気に抜きます。その時に同時に上下の一回目の義歯を同日に入れます。(即時義歯と言います)
- 一回目の義歯は多くの場合、異物感・嘔吐感・発音障害・土手の痛み・味覚の減退などを伴います。この義歯を調整を繰り返しながら徐々に慣らしていきます。
- 残せる歯がある場合には部分義歯の支えとして針金をかけて活用するか、平らに削って総義歯の下の噛む力の受け止めとして活用します。
- 抜いた歯の部分の土手の骨が固まった時期に二回目の本式の義歯を作製します。概ね抜いてから4~6ヶ月後になります。
- 残す歯の虫歯の治療・歯周病の治療は同時に徹底的に行います。
- 二回目の義歯を入れて治療完了後も定期的な診察に来ていただきます。
治療の流れ

女性の方60歳。初診時の口の中です。上顎は歯が残っていますが歯周病でぐらぐらの状態です。下顎はすでに総義歯ですが、全く合っていません。口の中で泳いでいます。


上の歯を全て抜いて上下の総義歯を入れました。入れてから丹念に調整します。


上下の土手の状態です。上顎は抜いてから数ヶ月経過しています。

上下の一回目の義歯を数ヶ月かけて調整したところです。かみ合わせ、歯の形・縁の形などを丹念に修正します。ここまでくればある程度噛めますし、見た目もかなり良くなります。


二回目の義歯のためにより精密な型を採ります。


作製した二回目の本格的な総義歯です。精密な外形とかみ合わせの付与、強度と薄さを兼ね備えた金属の補強をしています。

笑顔で笑えるようになりました。義歯も動かず食事も快調です。